コラム
顎関節症と生活習慣の関係性
顎関節症と生活習慣
顎関節症と生活習慣は関係しています。例えば考えごとをしているときや会話をしている時に頬杖をつくや、インターネットの普及や最近流行りのDX化によってパソコンなどのデスクワークが多くなったなどです。生活習慣を改善することによって顎関節症の症状がよくなるケースも多々あります。現在の顎関節症の考え方について説明していきますね。
現在の顎関節症の考え方
咬み合わせが悪いから顎関節症になるのでしょうか?歯ぎしりがあるから顎関節症になるのでしょうか?それは顎関節症が発症するかもしれないという1つの要因にしかなりません。
昔は咬み合わせが悪いから顎関節症になる。歯ぎしりがあるから顎関節症になる。姿勢が悪いから顎関節症になるなど、何か1つ悪いと顎関節症になると考えられている時代がありました。(このことを単一病因説と言います。)
しかし咬み合わせや歯ぎしり、姿勢などが顎関節症と関係している場合もあれば関係していない場合もあります。例えば咬み合わせが悪い方が顎関節症を発症されて治療すれば治ることもあります。しかし一方で治らないこともあります。噛み合わせが悪くても顎関節症にならない方もいらっしゃいます。例えばの話なのですが、歯が無い方や歯がボロボロの方が必ず顎関節症を発症しているでしょうか?答えはNoです。
現在の顎関節症の発症の考え方は、咬み合わせや歯ぎしり、姿勢など何か1つが悪くて顎関節症の症状が発症しているのではなくて、咬み合わせや歯ぎしり、姿勢などいくつかの要因(因子)が重なり、顎関節症の症状として発症していると考えられています。(このことを多因子病因説と言います。)【参照:木野孔司著 「新・顎関節症は怖くない」】
多因子病院説をもう少し詳しく説明致しますと、顎関節症を発症するかしないかのボーダーラインがあるとします。患者様それぞれでそのボーダーラインは違います。ボーダーライン内(患者様の耐久力以内)ではどれほど咬み合わせが悪かろうが、歯ぎしりがあろうが、ストレスがあろうが顎関節症は発症しません。しかし患者様の耐久力以内に収めることができず、ボーダーラインを越えてしまうとそこで初めて症状が発症するというものになります。
顎関節症の発症の原因や要因
顎関節症の発症の原因や要因は患者様それぞれで異なります。例えばAさんの発症する因子にストレス、噛みつづけ癖、歯ぎしり、噛み合わせの悪さがあり顎関節症を発症しています。Bさんの発症する因子もストレス、噛みつづけ癖、歯ぎしり、噛み合わせの悪さがありますが顎関節症を発症していません。このAさんとBさんの発症するかどうかの違いはそれぞれの持つ耐久力となってきます。以下に顎関節症の寄与因子になるほんの一部の例をいくつかあげておきますので、それぞれ自分は顎関節症になりえる因子を持っているか自覚しておくことが大切です。(なり得ない場合もありますので、そこはあしらかずご了承くださ。)
頬杖をつく癖がある
長時間頬杖をつくことによって、一方向から押し付けられることにより顎に負荷がかかります。
歯をくいしばるスポーツをしている
普段食事などの咀嚼の際に奥歯は60~80キロぐらいの力が掛かっています。特にウエートリフティングなどで喰いしばる時にはその何十倍もの力が掛かりますので、歯や顎に負担がきやすいです。
管楽器を吹くなど、演奏していることをしている
管楽器を吹くことをやり過ぎることによって、顎の筋肉や関節に負荷がかかり、顎関節症になりやすいとされています。またバイオリンを演奏時にもバイオリンを方と顎で挟み固定するような姿勢を取るので顎に負担がきやすいとされています。
寒い日はマフラーなどをあまりしないや薄着である
マフラーをしないことや薄着が悪いということではないんですが、寒い時期などになると首元や体が冷えて、体がこわばらせます。そのことによって血流が悪くなり筋肉が硬くなりやすいです。そのことによって顎関節症が発症しやすくなります。
ウインタースポーツ(スキーなど)をしている
これも寒いところでは筋肉が硬くなりやすいといった理由になります。
カラオケや合唱をしている
あくびとかもそうなのですが、発声練習で大きくお口を開けることは顎を痛めることがあります。ちなみにあくびをするときは下を向いて行うと、大きく開けることを防げて良いみたいです。
ご飯を食べる時は片噛み【右奥歯か左奥歯どちらかでしか噛まないこと】をすることが多い
私もそうなのですが、どちらか一方でご飯を片噛みしやすい方に顎関節症の症状がでやすいです。ご飯を食べる時は両方均等に噛むようにしましょう!
硬い食品が好きである
これも硬い物を噛む時に歯や顎に負担が掛かりやすいです。それとフランスパンみたいに硬いのに加え引きちぎる動作が入るのもよくありません。顎関節症状がある時はフランスパンを避けるようにしましょう。
うつ伏せや横を向いて寝ることが多い
うつ伏せや横を向いて寝ることによって、顎が常に押し付けられる状態となります。そのことによって顎関節に負担が掛かりやすくなります。
寝る時の枕が高めである
枕が高いと顎を引き締めやすくなり噛みしめやすくなりますので、適正な高さが良いです。
仕事などでパソコン業務を長時間している
パソコン作業につい集中すると、姿勢が前のめりになり、猫背になりやすいです。猫背になると肩回りの筋肉と顎関節周囲筋は関係しているので顎関節症状を発症しやすくなります。また噛み続け癖なども起こりやすいので注意したいところです。長時間同じ姿勢をとらないで、ときどきストレッチ運動をすると良いでしょう
スマートフォンをよく眺めている
スマートフォンの普及で手放せない世の中になってしまいました。たいていスマートフォンを見る時は顔を下に向けて見ます。このスマートフォンを下に向けて見る行為が長時間続くと、顎に負担がかかり症状が発現する可能性が高いとされています。スマートフォンを眺めるときは、顔の位置までスマートフォンを上げて見ることが良いとされています。
顎関節症の治療法の考え方
顎関節症の発症には人それぞれであり、発症する因子も違えば、その人自身が持つ耐久力も違うことを述べさせて頂きました。ではその治療法はとなると、それは寄与因子を一つずつ除去していくこととなります。寄与因子を一つずつ除去していき耐久力内に抑え、症状を発現しないようにします。例えで言うならば「だるま落とし」や「積み木おろし」のようなイメージです。焦らずにゆっくりと患者様それぞれができることをやっていけばいいのです。いくら寄与因子を持っていようともご自身の耐久力以内であれば症状は出ないので、症状さえ無ければOKなところが顎関節症治療にはあります。
よく聞くのが、噛み合わせが悪いことから顎関節症を発症しているので噛み合わせを調整してもらったとお聞きするのですが、顎関節症は様々な要因がいくつも重なって発症しますので、噛み合わせの悪さはそのうちの一つにすぎません。噛み合わせが発症要因になっていたとしても、どの程度発症に関わっているかわからないですし、もし他の要因の方が顎関節症の発症に起因していたとしたら、いくら噛み合わせを治療してもよくなることはないのです。したがって、最初から噛み合わせを調整するために歯を削るような不可逆的な治療はあまりおすすめしません。
顎関節症は生活習慣病の側面をもっていますので、日常生活からのセルフケアで多くの顎関節症が治癒します。自分も顎関節症かなぁと思ったら日常生活でやりがちなことにどんなことがあるかを一度セルフチェックしてみると良いと思います。