コラム
ガムピーリングとは?どんな効果がある?
目次
歯肉の色素沈着症への対応 ~スマイルに若々しさをプラス!~
通常健康的な歯ぐきや口腔内の色としてピンク色が多く、若年者であればあるほど、口腔内組織はより明るい色になります。しかし、歯周病やタバコによる影響などによって歯ぐきの色が暗赤色になったり、黒褐色になったりすることがあり、口腔内全体が黒く見えて何か不健康なイメージを与えてしまっているようになっていることがあります。そこで今回は「ガムピーリング」に関して書かせていただこうと思いました。ガムピーリングは広義の意味ではプラークや歯石除去、歯周外科を含めた歯周病治療全体的なことを指しますが、今回は狭義の意味で歯肉の色素沈着の除去に関して記載したいと思います。
色素沈着症の種類
1.子供の乳歯から永久歯に生え変わり(歯牙交換期)による色素沈着
乳歯から永久歯に生え変わる際に周囲の歯肉の細胞のアポトーシスが起こります。アポトーシスとは細胞が古くなったり損傷を受けた場合に、自己崩壊する細胞死の一種です。口腔内の粘膜や歯肉などの組織でアポトーシスが起こった際に細胞内の色素が周囲の組織に影響し、色素沈着を引き起こすことがあります。こちらが原因であれば永久歯の萌出が完了すると自然に消失していくので処置は何もせず経過観察で大丈夫です。
2.日焼け
歯肉の組織学的構造として、まず上皮と真皮に分かれます。そして上皮においても上から角化層、顆粒細胞層、有棘細胞層、基底細胞層に分かれます。日光による紫外線を受けると基底細胞層からメラニンが生成され湧き出てくるように色素沈着が起こることが言われています。
メラニンの種類は主に2種類あります。
- ユーメラニン(真性メラニン):黒褐色、日焼けによってよく見られる。
- フェオメラニン(亜メラニン):黄赤色、歯牙の交換期でよく見られる。
複合型
3.受動喫煙
受動喫煙によって口腔内にニコチンやタールなどの有害物質が入り、歯肉の色素沈着を引き起こすことがあります。ニコチンは血管を収縮させ血液循環が悪くなるために歯肉の色素沈着を促進している可能性があります。親が喫煙をしている小児の歯肉メラニン色素沈着率は約2倍との報告があります。
4.口腔乾燥
口腔乾燥によって、唾液が減少することで口腔内の自浄作用が低下し、歯肉表面に付着した色素が除去されにくくなります。その結果、歯肉の色素沈着が起こりやすくなります。また口呼吸はメラニン生成を活性化させる刺激となっている可能性があります。
5.ビタミンC(アスコルビン酸)不足
チロシンというアミノ酸がメラニンのもととなるメラノソームに働きかけているのですが、その時にチロシナーゼという酵素がチロシンを酸化させています。ビタミンCはチロシナーゼの酵素活性を阻害することによってメラニンを作り出さないようにしています。しかしここにタバコなどによる一酸化炭素が加わるとビタミンCを壊すのでメラニンの生成が増加してしまいます。喫煙の量が多ければ多い程メラニンの生成が多くなってきます。禁煙したからといってすぐに色素沈着が改善してくるわけではありません。
歯周病に関するもの、歯周炎・歯肉炎が原因のもの
歯周病に関する色素沈着の原因として高いものは、歯肉の炎症、発赤、腫脹、血液循環障害になってきます。
炎症後の色素沈着
炎症によるダメージを回復する際にメラノサイトが刺激を受けて、メラニンの過剰生成を引き起こします。
歯周炎が原因となる色素沈着症は歯周治療のみで改善するケースが多いです。よってプラークや歯石の除去などの歯周基本治療から歯周外科までを考慮した治療が大切になってきます。
タバコによる色素沈着
先ほども述べたようにタバコによて血液循環障害、ビタミンCの破壊などによって、歯肉の色素沈着を引き起こしているケースが多いです。それは喫煙本数が多ければ多いほど歯ぐきの色が黒く濃いです。
金属イオン溶出によるもの(メタルタトゥー)
銀歯や金属の土台など金属製の歯科材料や歯の詰め物などを使用していることによって、金属イオンが溶出し歯肉に沈着することがあります。金属イオン溶出による着色は除去が難しく、除去後に結合組織移植術が必要になってくる場合があります。
メラニン色素除去の治療方法
フェノールによる化学物質を使用した方法
フェノールは殺菌や消毒剤として古くから使用されている物質です。フェノール剤による上皮組織の除去によって歯肉の色素沈着を改善する方法になります。しかしフェノール自体は非常に毒性が高いです。また処置後にお口の中が突っ張るような感じが続く時があります。
レーザーによる方法
・CO2レーザー(炭酸ガスレーザー)による方法
治癒形態としては二次治癒(肉芽組織が盛り上あがり治癒する過程のこと。瘢痕形成が多い。)
メリット:短時間で除去が終了する。
デメリット:照射部位が炭化するため除去が確実かどうか不明である。術者の経験やテクニックが重要になってくる。基底細胞層までとることになるのでEr:YAGレーザーに比べると高侵襲である。
・Er:YAGレーザーによる方法
治癒形態としては一次治癒(肉芽組織の形成もなく、瘢痕が少ない。)
メリット:CO2レーザーと比べると低侵襲で体に優しい、確実な除去が可能。また、痛みが少ない。Er: YAGレーザーは水への高い吸収性がありますので、Water Micro Explosion法によって高い蒸散能力があり、水を含んだ生体組織の表層に作用し、また熱の発生が少ないために痛みがごくわずかです。
デメリット:時間が長くかかる。CO2レーザーに比べてパワーが弱いので時間が掛かってしまうことがデメリットになります。
このうち当院ではEr:YAGレーザーによる方法で歯肉の色素沈着を除去しています。Er: YAGレーザーはCO2レーザーやNd:YAGレーザーなどに比べて照射部位が表層に限局しているので、組織の深部への影響が少なく、周囲の組織を保護することができます。体にやさしいです。歯ぐきの色素沈着度合いにもよるのですが、通常は一回の除去で可能なのですが、除去の程度によっては2~3回程Er:YAGレーザーを当てさせていただく場合がございます。
再発率は20%~45%程との報告があります。レーザーはあくまでも対称療法になるので、いかにして原因となるものを取り除くかによって再発率は変わってきます。例えば色素除去後でもタバコを吸い続けましたら、また歯肉の色素沈着は起こってきます。よってまずは何が原因で歯肉の色素沈着を引き起こしているかを考えることが大切です。特に子供の歯肉の色素沈着の対応方法としては、その原因の究明がまず大事になってきて究明後にその対処が必要となってきます。
また当院ではガムピーリングはただ単に歯肉の色素沈着を行うだけではないと思っています。それはタバコなどをやめていただくよいきっかけにもなると思います。タバコは癌や脳卒中など全身の健康への影響が指摘されています。また口腔内においては歯のステインの着色、歯周病、インプラント周囲炎やインプラントの予後不良のリスクファクターにもなっています。歯ぐきが黒くなるだけならまだいいのですが、せっかく歯ぐきをきれいにしたのならまた黒く汚したくはないですよね?そこで今一度健康のことについて考えて立ち返っていただきタバコをやめるよいきっかけにしてもらえたらいいなぁと思います。
歯ぐきや歯肉の色が黒くて気になるなど何かございましたら、当院へお気軽にご相談くださいね。今回のコラムはここらぐらいにしておきます。御拝見ありがとうございました。