三重県伊賀市の歯医者「矢谷歯科医院」です。親知らずの治療、インプラント治療はぜひご相談ください。

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コラム

コラム

抜歯後について



親知らずなどを抜歯した際に、痛みがいつまでも続いて耐えられなかったり、大きな穴が空いてそこに食べカスなどが詰まったりして困るやうっとうしい、隣の歯が噛むと痛いという経験はないでしょうか?抜歯後抜いたところがどのようにして治ったりしていくかや抜歯後の不快症状などについて述べていきたいと思います。

抜歯後の治癒について(抜歯窩はどのようにして治っていくのか?)

 まず抜歯したところの治癒についての話になるのですがけっこう専門的に述べると、歯には歯の根っこ(歯根)を咬合力から緩衝させるための歯根膜というのがあります。抜歯した部位(抜歯窩)にその歯根膜が残存すると、そこから血管新生が起こり血の固まり(血餅)が作られます。(この時期のことを凝血期といいます。)およそ1週間前後当たりで血餅から幼弱肉芽へと変化していきます。(この時期のことを肉芽組織期といいます。)更にそこから20~25日間ぐらいで上皮が張ってきて、抜歯窩内に新生骨のもととなる仮骨が形成されてきます。(この時期のことを仮骨期といいます。)その後は6ヶ月~1年をかけて成熟した歯槽骨となってきます。(この時期のことを治癒期といいます。)

 以上のように抜歯窩は二次治癒という治癒過程を辿りますので、まずは血餅が作られることが大切になってきます。

抜歯後に治癒が悪い時や不快症状が考えられる原因は?

 抜歯後に時折痛みが消えない、じくじく痛むなどの症状を訴えられる時があります。原因で一番多いのはドライソケットになってきます。

 親知らずを抜くと大きな抜歯窩ができ、上記で述べたようにそこに血餅が形成されて、肉芽となり治癒する過程を辿るのですが、この血餅がうまく形成されないときがあります。言わばドライソケットは血餅が作られず、骨が剥き出しになった状態のことです。以下にドライソケットになりやすいいくつか理由を述べたいと思います。

麻酔がすごく効いているので出血が起こりにくい。

当然麻酔がよく効かさないと患者様側からしたら痛くて抜けたものじゃないのですが、出血を抑えて術野を確保するのと麻酔液を長く留まらすために、麻酔液の中には血管収縮剤が入っています。麻酔がよく効くと末梢の組織からの出血が少なくなるので血餅が出来にくい状態になる側面も持ち合わせています。

ちなみに抜歯後に眠たくなることがよくあるみたいなことをよくお聞きするのですが、局所麻酔は末梢神経に作用させていますので、眠たくなることはほぼ無いです。(抜歯から来る緊張や抜き終わったあとの疲れから来るのではないかなぁと思っています。医学的根拠はありませんが・・・。)

歯が埋まっている周囲の骨が硬い。

40代以降の患者様に多いのが、親知らずが埋まっているところの周囲の骨が硬化していたいり、骨癒着を起こしているケースがあります。骨小孔が少なく緻密化しているので出血しにくい状態になっています。

そもそもの抜歯窩が大きいので脱落しやすい。

親知らずの抜歯窩となると大きいですので、そもそもが血餅で十分満たされていなかたり、血餅が脱落しやすいのがあります。

出血が気になってうがいをよくする。

抜歯後に麻酔の効果が無くなってくると、血管収縮剤の作用が弱まるので少し出血してくることがあります。そこに唾液が混じると患者様からしたらあたかも血が多く再出血しているかもと思い、うがいを何回もしてしまいます。このことによってせっかく出来ていた血餅も含嗽によって流されてしまう可能性高くなってしまいます。

その他の原因として抜歯後感染があります。抜歯窩が汚染されて、抜歯窩が感染してしまい膿などが形成される状態です。また持病で糖尿病や自己免疫疾患により免疫抑制剤を服薬されている方は抜歯後の治りが悪いことがあります。

抜歯後の不快症状として

知覚過敏

 虫歯や歯周病によって親知らずの抜歯後に手前の歯がしみるや知覚過敏の症状が生じることがあります。水平に埋まっている親知らずは手前の歯(7番)に食い込んでいることがよくあります。そこが清掃不良となると虫歯や歯周病が発生する可能性が高くなります。その親知らずを抜歯すると、今まであった壁を取っ払うような物ですから、虫歯で穴が空いているところや歯周病によって歯の根っこが露出しているところに刺激が伝わりやすくなり知覚過敏の症状が起こります。もし根っこが露出してのものだけであれば、抜歯窩が治癒してくると歯ぐき(歯肉)が盛り上がりますので症状としては消えていきます。

口内炎

 親知らずを抜歯する際は麻酔をよく効かすために、伝達麻酔と浸潤麻酔の2つを併用することをよく行います。伝達麻酔とは神経幹や神経叢に麻酔を作用させて、そこから抹消神経に作用させる方法です。下の親知らずを抜歯する場合は下顎神経に作用させます。次に伝達麻酔を行ったあとは、歯ぐきの方に浸潤麻酔を行います。これは部位によって神経の支配領域や分布が違いますので、下顎神経に作用させたとしても麻酔が効いていない部分がありますので、そこをカバーするために浸潤麻酔を追加で行っております。伝達麻酔および浸潤麻酔が奏功すると、親知らずの周囲はもとより、舌の半側および唇の半側まで痺れます。(感覚としてはブワッ舌や唇が膨らんだ感じ)

 抜歯後をしたあとでも2~3時間ぐらいは麻酔が効いています(人によっては5時間ぐらい効いていることがある)ので、麻酔が効いている間はできるだけしゃべることや食事を避けなければなりません。麻酔が効いている間は舌や唇、頬っぺたをうまく動かすことができませんので、噛みやすかったりします。自分でも知らない間に噛んでいることがありますので、気をつけないといけないです。(感覚的なところで言うと弾力があるタコを噛んでいる感じがあるなら、舌や唇を噛んでいる可能性が高いです。)更に噛んだ部位は腫れますので、更に噛みやすくなり悪循環になります。このことによって口内炎ができて、いつまでも抜歯したところの痛みが消えないや周囲が擦れて痛いなどの症状が生まれてきます。その他は免疫力が下がっていて感染したなどで口内炎ができたなどがありますが、大概は噛んでできた口内炎が一番多く見られます。

顎骨の損傷や骨折

先ほども述べたのですが、歯根と周囲の骨が癒着していることがあります。これは年齢が上がるほど癒着している可能性は高くなります。癒着していると中々抜歯することが難しく時間が掛かります。癒着しているとうまく歯根が脱臼されないので、力が周囲にかかり顎骨が骨折を起こすことがあります。下の親知らずで言うならばベロ側の骨が損傷しやすいです。(俗に舌側板が割れると言う)このことによって抜歯後に物を飲み込む時に痛いなど嚥下痛がでることがあります。

神経損傷

 親知らずの根っこ付近には下顎管という管が通っており、そこの中を下歯槽神経や血管が走行しています。直接神経や血管が損傷されることは少ないのですが、抜歯時の操作の刺激や抜歯後の炎症反応によって、抜歯後に唇や舌がピリピリと痺れたような症状がでることがあります。症状の大抵は半年以内に収まるのですが、半年を越えても収まらないようなら症状が消えるのは難しいとされています。(それでも徐々に症状は収まり、永久的に痺れているのは稀みたいです。)

上顎洞への穿孔

 人間には誰しも上顎洞という副鼻腔があります。この上顎洞の役割としては鼻から流入した空気をきれいにしたり暖めて気道に流したりしていて、また解剖学的には空洞があることによって頭部を軽くしているとのことです。上顎の親知らずを含め、上顎の臼歯の歯根は上顎洞底に近くまであります。(平均すると上顎の6番の口蓋根が一番近くにあるとのことです。)親知らずが深い位置に生えていたりすると、その分上顎洞へ歯根が近接していますので、抜歯の際に上顎洞に穴が開く(穿孔する)可能性が高くなります。症状としては抜歯後に飲食したあとに、水が鼻から垂れるや空気が漏れる感じがするといったことになります。先行しても穴が小さければ自然に閉鎖するのですが、大きいようですと(一般的には2mm以上と言われている。)上顎洞瘻孔閉鎖術などの閉じるような手術が必要になってくることがあります。

以上のように抜歯後の不快症状は様々ありますので、次回はその対処方法などについて説明していきたいと思います。

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