症例紹介
症例紹介:上顎の前歯部に対して、ホワイトニングおよびジルコニアクラウンを装着した症例
こんにちは。三重県伊賀市にある歯医者「矢谷歯科医院」です。最近寒い日が続いていますが、みなさま体調は大丈夫でしょうか?場所によっては積雪などもあり大変な状況かとは思いますが、是非お気をつけくださいね。
さて今回は、上顎の歯に対してホワイトニングおよびジルコニアクラウンを装着した症例に関して御紹介していこうと思います。みなさんはホワイトニングをされたことはございますでしょうか?ホワイトニングは昨今では歯科医院以外でもホワイトニングサロンにて誰でも手軽にホワイトニングができる時代となりました。しかし中にはなかなかホワイトニング効果を得られなかった方もいらっしゃるのではないかと思います。正直、今回の症例においてもホワイトニング効果を得られなかった症例となります。どのような経緯なのかどのような歯はホワイトニング効果が得られにくいかなどを解説していきます。
目次
症例紹介
患者様は24歳女性の方で、主訴は左上の歯(画面向かって右側。以後、左上1と表記)の変色が気になるので何とかしてほしいとのことでご来院されました。写真は歯の色がわかりやすくするためにシェードテイキング時の写真を載せているのですが、左上1がかなり変色しているのがわかります。
歯の着色および変色の主な原因と対処法
ここで歯の着色や変色の原因として考えられることを挙げておきたいと思います。
1.虫歯
虫歯によって歯が黒く変色します。虫歯であれば虫歯の部分を削って白い詰め物を行うことによって治ります。
2.ステイン
茶渋とかワインやカレーなどの食べ物の汚れが着色してしまったことが原因で起こります。自宅での歯磨きだけではなかなかステインを落とすことが難しいです。歯科医院で専用の機器によるポリッシングで落とすことができます。
3.補綴物および詰め物などの人工物の劣化
白い詰め物(CR、コンポジットレジン)や保険診療で作製する前装冠などプラスチック系の被せ物が劣化し茶色く変色してきます。プラスチックはホワイトニングでは白くすることができないので、詰め物をやり替える必要があります。
4.天然歯の歯の色調
年齢が上がるにつれエナメル質が薄くなり、象牙質の色が目立ってきます。そのことによって歯が黄色くなってきます。ステインであれば磨けば白くなりますが、歯自体が着色しているので磨いても白くはなりません。オフィスホワイトニングやホームホワイトニングにて白くすることができます。
5.神経のない歯の変色
神経を抜いた歯(失活歯)は年々茶色や黒く変色してきます。ウォーキングブリーチ(失活歯に対するホワイトニング)にて白くすることができます。
症例の患者様の場合は神経を抜いたことによる変色であることが考えられます。
ホワイトニング効果が得にくい歯とは?
天然歯の歯であればホワイトニングにて白くすることができることを上記で述べさせていただいたのですが、残念ながらホワイトニング効果を得にくい着色や変色が存在していることも事実です。
歯科業界で有名なのはFeinmanらの分類が有名なのですが、患者様にわかりやすく言うと歯の色がオレンジや黄色などの暖色系であればホワイトニング効果を得やすいです。一方、歯の色が黒やグレー、青など寒色系の色はホワイトニング効果が得にくくなります。
症例の患者様の場合は後者の黒や青みがかっていて、寒色系の色になります。
歯を削って治療をしたくないとの患者様のご希望でホワイトニング効果を得にくいことなど上記のことを十分に説明させていただいた上でウォーキングブリーチを行うこととなりました。
ウォーキングブリーチ
ウォーキングブリーチは失活歯に対して行うホワイトニングになります。歯の表面および根管内に薬剤を入れて歯の漂白を行います。当院ではウルトラデント社のオパールエッセンスBOOSTを使用しています。
結果としては、合計3回ウォーキングブリーチを行ったのですが、変色を消して、歯を白くすることができませんでした。黒く変色しているところ以外は白くなっているのですが、肝心の変色部位に対しては変化を認めませんでした。やはり寒色系の変色はホワイトニングで治すのは困難でした。
ジルコニアクラウンでの治療
残念ながらホワイトニングでは歯の変色を治すことができなかったので、患者様と話し合った結果、ジルコニアクラウンにて被せ物をさせていただくこととなりました。ジルコニアクラウンの特徴や種類に関しては当院ホームページの診療メニュー:審美治療のページに掲載しておりますので、是非参考にしていただければと思います。
ジルコニアクラウンなど被せ物をする時に気をつけないといけないことは、被せ物は人工の作り物になりますのでホワイトニングなどの薬剤にて白くすることはできません。ですので、被せる前に他の歯の治療などを終わらせておかないといけません。特にこの患者様の場合は右上1(画像では向かって左側の一番前の歯)の詰め物が変色しておりましたので、新しく詰め物をやり替えさせていただきました。このように先に治療しておかないと被せ物の色を後で変えることはできません。よって前歯部などでは被せ物をする前に他の歯の治療があれば、それを先に行っていく必要があります。
患者様の希望としては隣在歯など他の歯の色は気にならないとのことで、他の歯に対するホワイトニングはしませんでした。とにかく左上1の歯の色を治してほしいとのことでした。よって、右上1の詰め物のみを変更して、その後左上1にジルコニアクラウンを被せました。
ジルコニアクラウンの種類
審美治療において、歯の条件や患者様の経済状況などいろいろなことを勘案して決定します。症例患者様の場合はジルコニアクラウンのハイグレードタイプを被せることとなりました。ハイグレードタイプの特徴としてはちょうど中間に位置するグレードになりまして、きれいさに関してはスタンダードよりはきれいで、プレミアムよりは劣るって感じです。私としてはプレミアムタイプが周辺の歯の色に合わせやすいと思うのですが、それぞれの特徴を説明した上で患者様はハイグレードタイプを選ばれました。
ジルコニアクラウン試適
ジルコニアクラウンを装着するために、患者様に納得いくまでシャードテイキング(色合わせ)を行いました。私としては一生とまではいきませんが、せっかく入れさせていただく歯を長い間使っていただきたいとの思いで、患者様が後悔なく被せてよかったと思っていただけるように心掛けています。症例の患者様の場合も一回では色が合わず何回もシェードテイキングおよび試適を行い決定致しました。
ジルコニアクラウン装着
ジルコニアクラウンをさせていただいた総評としては、ハイグレードタイプでは会話するぐらいの距離から見る分には違和感はないのですが、隣の歯と色を完全に一致させることは難しく、その患者様が持つ歯の個性までを表現することまではできません。しかし患者様からは「私の中では全くわからないと」お言葉を頂戴し、とてもきれいになったと喜んでいただき大変満足していただきました。
治療費について
今回の治療費に関しては、通常でしたらジルコニアタイプのハイグレードでは¥88000-(税込み)になるのですが、ウォーキングブリーチがうまくいかなかったことを勘案させていただき、¥71500-(税込み)でさせていただきました。(ウォーキングブリーチに関しては材料費を患者様から頂いた形になります。)
ジルコニアクラウンは保険診療ではできなく、自由診療での治療になります。自由診療と保険診療の違いについても当院ホームページに記載しておりますので、参考にしていただければと思います。
まとめ
今回の症例においてはホワイトニング(ウォーキングブリーチ)およびジルコニアクラウンを装着した症例に関して御紹介させていただきました。ホワイトニングやウォーキングブリーチだけでの対応では難しいケースもございます。歯の着色や変色、歯の色で悩まれている患者様の参考になればと思います。
歯の色のことやその他のことでお悩みの方は是非、三重県伊賀市にある歯医者「矢谷歯科医院」に御相談くださいね。