症例紹介
症例紹介:上顎前歯部に対して歯周外科を行いオールセラミックスクラウンにて笑顔を改善した症例
こんにちは!三重県伊賀市にある歯医者「矢谷歯科医院」です。
春のポカポカ陽気の中、みなさんお花見やお出かけされていますでしょうか?桜はだいぶ散ってしまいましたが、それでもまだまだ春を楽しめます。そして春と言えば始まりの季節です。体の健康やお口の健康を整えていろいろと始めてみましょう!私も前々から始めたいと思っていた新たな治療法を院内研修し、患者様に少しでもいい治療を提供できるようにしていきますので、楽しみにしておいてください。
さて今回の症例としては上顎の前歯部に対して複合的に治療を行い、オールセラミックスクラウンを入れさせて頂いた症例となります。
目次
症例紹介
まずは初診時と治療終了時の写真を見ていただきたいのですが、左上の一番前の歯(以下、左上1)にオールセラミックスクラウンを入れさせていただいたのですが、これはただ単に歯を削ってオールセラミックスクラウンを入れただけではないのです。左上1にオールセラミックスクラウンを入れるまでにはさまざまな工程があったので、詳しく解説していきたいと思います。
初診時
患者様は36歳、女性の方でもともとは虫歯を治療してほしいとのことでご来院していただきました。虫歯の治療を行ったり、虫歯の予防ために、上顎の左右の親知らずを抜歯したりと色々としておりました。患者様は特に上顎前歯部の歯に関してはそんなに気にされておられなかったのですが、歯が茶色に変色していて、左上1と一番前の歯なので目立ちますので、気にならないのかなぁと思い患者様にお尋ねしたのが治療するきっかけになりました。
歯の変色の原因
歯の変色に関しては
①コーヒーやワインなど食事によって起こる変色
②加齢によってエナメル質が減り、象牙質が目立つことによる変色
③虫歯や歯周病によって歯の神経が死んでしまう(壊死する)ことによる変色
上記のようなことが考えられるのですが、この患者様の場合は③に当たります。歯の変色に関して、患者様にお聞きすると昔に前歯を強く打ったことがあるとのことでした。歯の変色に関しては他の症例報告にも記載しておりますので、そちらも参考にしていただけたらと思います。
根尖部の歯根嚢胞
打撲等で歯を強く打つことによって、その場は何事もなく終わることが多いので、その衝撃によって歯の中の神経が死んでくる(壊死してくる)ことがあります。神経が壊死してくるのを放置することによって、だんだんと歯が変色してくることが多いです。そして歯の神経が死んでいるを放置しておくことによって根尖病巣や嚢胞に発展していまいます。レントゲン写真やCT撮影を行わせていただくと、根尖部に嚢胞を形成していました。嚢胞は放置しておくことによってだんだんと大きくなってくる可能性が高いので、小さいうちに摘出しておく必要があります。
左右の歯茎の高さの違い
また左上1と右上1と見比べていただくとわかると思うのですが、左上1が短いです。これは歯と歯茎の境目(歯頚部)の位置が違うからです。2~3mmこの高さが違うと左右対称性に違和感が出てきます。またこのまま歯を削って被せ物をしたとしても極端に短い歯の被せ物しかできずまったく審美的改善が望めません。そこで歯周外科(歯肉弁根尖側移動術)を行い、歯茎を下げて歯頚部を左右ともに一致させる必要性がありました。
その時の手術時間はかかったとしても患者様の負担を考慮すると外科的な手術は1回で済ませた方がいいと思い、歯周外科および嚢胞摘出を同時に行うこととしました。
まずは左上1を治療していくにあたり根っこの中の治療(根管治療)および仮歯の作製を行いました。仮歯の写真を入れた写真を見ていただくと歯の短さがより際立ちます。
歯周外科および嚢胞摘出
左上1に対して歯周外科および歯根端切除術を行いました。どれぐらい骨や歯茎を下げたらよいか事前にシュミレーションしたサージカル・テンプレートを装着し、歯ぐきを下げました。歯根端切除に関しては嚢胞を摘出して根尖部を切除した後にMTAセメントという生体親和性に優れたセメントを用いて逆根充を行いました。その後歯茎を下げた状態で縫合を行いました。術前および術後の写真を見比べていただいたらわかると思うのですが、だいぶ左上1が出ました。
ホワイトニング(ウォーキングブリーチ)
ウォーキングブリーチ前
ウォーキングブリーチ後
術後4カ月頃とある程度手術部位が治癒してきたところで、歯の変色を取り除くために失活歯に対してウォーキングブリーチを行いました。ウォーキングブリーチとは神経が無い歯に対して行うホワイトニングのことです。ホワイトニング剤を歯の中である歯髄腔と歯の表面に塗布して漂白していきます。この症例においては最終的にはオールセラミックスクラウンを装着する予定だったので、変色したままオールセラミックスクラウンを被せてしまうと下の色が反映されてしまい、綺麗に仕上げることができないからです。
ホワイトニング施行前と後を見比べていただくと茶色い変色が取れて、白くなっているのがわかりますね!
ホワイトニングに関しては当院ホームページのホワイトニングページや過去のコラムを参考にして頂けたらと思います。
オールセラミックスクラウン(e-max)について
術後6カ月頃より歯の土台を作製し、歯の形成を行い、最終的な被せ物を作製していきました。e-maxとはセラミック素材のことで、従来のセラミックスを強化して、天然歯に近い透明感があり、審美性に優れた材料になります。当院では一番綺麗で美しい材料となります。
e-maxのメリットおよびデメリット
①審美性が高く、美しい
他の素材と比較すると、透明感がありますので、天然歯と同じような質感で詰め物や被せ物をつくることができる
②歯垢などの汚れがたまりにくく、歯周病になりにくい
保険診療の材料に比べると、プラークなどの汚れの付着率が低いため磨き残しが少なく、歯周病になりにくいです。
③虫歯になりにくい
支台歯(被せ物をする歯のこと)との適合精度も高いため、歯と被せ物の隙間ができにくく汚れが溜まりにくいため、虫歯になりにくいです。
④金属アレルギーにならない(心配がいらない)
金属は使用していないため、生体に優しい材料です。金属アレルギーの心配がありません。
デメリット
①支台歯の色に左右されやすい
e-maxは透明性が高い反面、支台歯の色の影響を受けやすいです。よってこの症例では変色している歯に対して、被せ物をする前にウォーキングブリーチにて漂白して歯を白くする必要がありました。この症例では保険材料である金属などは使用されてなかったので、綺麗に歯を白くすることができましたが、保険診療で使用されるような材料であれば歯に金属イオンが移ってしまい、ウォーキングブリーチ等では取り切れない場合がありますので、そのような場合やあまりにも変色している場合はe-max以外の材料で被せ物をすることを考えないといけないです。
②瞬発的な力に弱く、欠ける可能性がある
従来のセラミックスを強化したとはいえ、1点集中などの瞬発的な力が掛かってしまうと割れたり欠けたりする可能性がありますので、氷や飴、伊賀名物かたやきを食べる際は気をつけなければなりません。
③他の素材と合わない
e-maxは透過性が高いため、他の材料と合わない可能性があります。たとえば1本だけe-maxで被せ物をしたいと思っても、隣接する歯が天然歯ではなく他の材料での被せ物をしていると色や質感が合いません。よって単独で被せ物をする場合は若干苦手なところがあります。そのような場合はジルコニアフレームに陶材を盛るなどして被せ物をした方がいいでしょう。(当院でいうとジルコニアクラウンプレミアムに当たります。)
オールセラミックスクラウン(e-max)の装着
装着後した写真になります。歯頚部の位置が右上1と近接して審美性が改善されましたね。患者様には大変喜んでいただきました。本当にいい笑顔になったと思います。当初はお子様の卒園式や入園式に間に合わすように計画していたのですが、間に合わすことができず申し訳なかったです。これからはお子様と最高の笑顔でいい写真をいっぱい撮ってくださいね。
総評
今回ご紹介させていただいた症例はただ単にオールセラミックスクラウンを入れただけではなく、隣在歯との調和を考え歯周外科やホワイトニング(ウォーキングブリーチ)を併用し、複合的に治療させていただきました。
治療費としては
歯周外科:¥132,000-(税込み)
ウォーキングブリーチ:¥33,000-(税込み)
オールセラミックスクラウン(e-max):¥104,500-(保障費込み)(税込み)
クリーニング等の保険診療分となります。
保険診療では決められた治療しかできないのですが、自由診療は制限が無いので色々とできる幅が広いです。今回、ただ単に歯をきれいにしたってことだけではなく、満面の笑顔をつくり、お子様との写真を楽しんでいただくという付加価値を受け取っていただけたのではないかぁと思っております。時間もお金もかけて頑張っていただいたので、その分楽しんでいただきたいです!自由診療の付加価値などについては当院ホームページを参考にしていただけたらと思います。
まとめ
今回は上顎前歯部に対して複合的に治療を行い、オールセラミックスクラウンを入れさせていただいた症例をご紹介させていただきました。いい笑顔を作りたいやきれない歯を入れたいなど何かございましたら、三重県伊賀市にある歯医者「矢谷歯科医院」に是非、ご相談くださいね!