コラム
歯科衛生士と歯科医師の違いについて
こんにちは。三重県伊賀市にある歯医者「矢谷歯科医院」です。
今回は歯科衛生士と歯科医師の違いについてご説明させていただこうと思います。
昨今の歯科治療においては、歯科医師が主となって治療しているのですが、歯科衛生士はなくてはならない存在となっております。歯科衛生士が初めて誕生したのは終戦後の昭和23年に歯科衛生士法が制定され、保健所および歯科医師のアシスタントおよび歯科衛生士業務を行う担い手とされたとのことです。(参照:日本歯科医師会)
また昔ではほとんどが歯科衛生士は女性の方の職業だったのですが、最近では男性の方がなられるケースも増えました。(それでも歯科衛生士の数は99%が女性の方です。男性の方も徐々に増えてきています。)
また歯科医師においても、女性の割合が増えてきており、令和2年度時点では歯科医師は全体で約10万人在籍しているのですが、そのうち女性歯科医師の割合は約2万6千人と全体の25%を占めているとのことです。(参照:厚生労働省)このことからも女性の社会進出がなされてきていることがわかりますね。筆者自信もフィリピンのマニラであった学会に参加したことがあったのですが、フィリピンの歯科医師男女比を現地の人に聞いてみると、男性の方よりも女性の方の方が多いみたいです。学会の準備および運営を担ってくれていたスタッフさん(歯科医師)を見ても圧倒的に女性の方が多かったことを記憶しております。
最近は個人情報やプライバシーの観点から、名札を付けていない歯科医院も多いのではないでしょうか?中には若い歯科医師の先生であれば、歯科衛生士と間違われる患者様もいらっしゃるのではないかと思います。また歯科医師と歯科衛生士では何が違うの?って思われている患者様もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は歯科医師と歯科衛生士の違いやできること、できないことなどを患者様および歯科衛生士、歯科助手のなど全国のスタッフさんにご理解いただきたくコラムにしました。
目次
歯科医師と歯科衛生士の違い
- 1人で医療行為をすることができない
- 歯の治療ができない
- 病気の診断ができない
- レントゲン写真撮影ができない
- 薬の処方をすることができない
1.1人で医療行為をすることができない
まず1番の大きな違いとしては、勝手に歯科衛生士1人で医療行為をすることができません。歯科衛生士は歯科医師の指示のもとでしか歯科医療ができないという形になります。医科で言うところの医者と看護師みたいな関係になります。
2.歯の治療ができない
歯科医師は歯の治療ができます。しかし歯科衛生士は歯の治療ができません。歯の治療とは簡単に言えば歯を削ったり、歯を抜いたりする行為のことです。もちろん歯ぐきをメスを使って切開するということもできません。
ここで患者様が間違いやすい歯科衛生士にはできなさそうで実は出来る医療行為3選をあげておきます。
歯科衛生士にはできなさそうで実は出来る医療行為3選
詰め物を行うこと
詰め物の種類によっては歯科衛生士でも行うことができます。インレーという銀色の金属の詰め物をすることは、歯科衛生士はできません。患者様もお聞きになったことがあるかもしれないのですが、それは「レジン」という白いプラスチックの材料になります。(歯科医院内でコンポジットレジンやCRという言葉が飛び交っていると思います。)
虫歯のところを削って、そこを補うための詰め物のことです。これは「絶対的歯科医行為」には当たらず、「診療補助」に各当します。しかし詰め物を行う前の「歯を削る」行為は絶対にやってはいけません。
麻酔を行うこと
歯科で行う一般的な麻酔は虫歯などを削る際に用いられる浸潤麻酔というものになるのですが、実はこれ歯科衛生士でもすることができます。ちゃんと法律で定められています。下の親知らずの抜歯で用いられる伝達麻酔に関しては解釈次第では浸潤麻酔の一種と受け取れるのですが、はっきりとはわからないです。伝達麻酔は訓練が必要です。当然ですが全身麻酔はできません。(歯科医師であっても相当な訓練を受けていないと怖くてできません。)
当院では現在のところ、歯科衛生士に浸潤麻酔はさせておりません。全てドクターが麻酔を行っております。将来的には歯科衛生士にも業務を担っていただくことを検討中ではあるのですが、担っていただく場合は十分な訓練を実地いたします。もし麻酔の経験をしたいや手技に不安がある歯科衛生士の方は御連絡をいただけたらと思います。一から丁寧に指導致します。
歯の型取り
歯科衛生士であれば歯の型取りを行うことはできます。
これは型取りには2種類あり。「精密印象」と「対合印象」があるのですが、歯科衛生士ができるのは「対合印象」になります。患者様にはわかりにくいかもしれないのですが、
「精密印象」→歯医者が削る機械を使用し、歯を形作りした部分の型取りをすること
「対合印象」→噛み合わせを確認するために、精密印象を行った歯と対になる部分の歯の型取りを行うこと。
例えば、右下6番(前から数えて右下の6番目の歯のこと)の歯を削ったなら、右下6の印象のことを「精密印象」、対合歯である右上5番、6番の印象が「対合印象」になります。
これに関しては現在当院でも「対合印象」は歯科衛生士に行っていただくことが多いです。それに対して「精密印象」は必ず歯科医師が担っております。きっちりした印象は被せ物などの補綴物の精度に影響してくるので、自分で納得いく歯の型取りがしたいのもあります。
3.病気の診断ができない
歯科衛生士は病気の診断ができません。虫歯とか歯周病、顎関節症など病名をつけるための診断ができなくて、歯科医師はその診断ができます。歯科衛生士はわかっていても「これは虫歯です」って言い切ることはできないです。「これ虫歯かもしれないですね」とかアドバイス的なことはいいので、そのあと歯科医師に診断してもらうことが必要になってきます。
また、歯科医師が診断した上で「この虫歯だから患者さんに説明してきてくださいね」と伝えた上で歯科衛生士が説明するのは問題ありません。しかし歯科衛生士が診断できないからといって知識を持たなくてもいいというわけではなく、クリーニングなどの歯のメンテナンス中に虫歯が見つかることが多いので、歯科衛生士も勉強し知識を備えることが大切だと思います。
4.レントゲン写真撮影ができない
歯科衛生士はレントゲン撮影ができません。しかし、準備していただくことはできます。よって当院ではレントゲン撮影の準備や補助を歯科衛生士あるいは歯科助手にしてもらうのですが、最後の照射ボタンを押すのは必ず歯科医師が行っております。
5.薬の処方をすることができない
歯科衛生士は薬の処方ができません。歯科医師の指示のもとお薬が処方されなければなりません。しかし、歯科医師の指示のもとであれば口内炎や歯周病で歯ぐきが腫れているところにお薬を入れたり、消毒することはできます。
歯科医師と歯科衛生士それぞれの役割
上記に述べたことはほんのごく一部なので、細かくはまだまだあります。歯科医師の役割としては「治療に専念」することになります。歯科衛生士の役割としては「予防に専念」することになります。
歯科衛生士の主な役割
歯科衛生士の仕事内容の主な役割として、
- 予防処置
- 歯科診療補助
- 歯科保健指導
になります。歯科衛生士は虫歯や歯周病の予防に特化していますので、歯科衛生士が居なかったら、歯科治療が成り立たないぐらい、本当に重要で大切な存在となります。
私事として恥ずかしい話なのですが、クリーニングやメンテナンスの技術、歯磨き指導、患者様との会話の中で患者様がどのようなことを求めているかを察知すること。やさしい雰囲気など私よりも長けていると思うところが多々ありますので、見習わないといけないことも多いです。私も歯科の知識などでは負けないように日々研鑽します。
まとめ
患者様を歯科医師一人で治すのではなく、組織(チーム)で治していきます。歯科医師、歯科衛生士にはそれぞれの役割がありますので、それをうまいこと組み合わせることが大事だと思います。当院にて歯科医療を通じて患者様に貢献することをいっしょにしていただける歯科衛生士の方や歯科助手希望の方がいらっしゃいましたら是非、御連絡くださいね!いっしょに成長しましょう!