三重県伊賀市の歯医者「矢谷歯科医院」です。親知らずの治療、インプラント治療はぜひご相談ください。

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コラム

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歯科用レーザーについて 



昨今、歯科治療時にレーザーを用いて治療することが普及してきています。レーザーの種類もさまざまあるので、使用目的によって使い分けることが大事だと思います。当院ではエリビウムヤグレーザー(以下、Er: YAGレーザー、アーウィンアドベール Evo® 発売:株式会社モリタ)を採用しています。

今回は、Er: YAGレーザーの特徴やどのような治療に対して活用できるかなどを解説していきたいと思います。

Er: YAGレーザーとは

Er: YAGレーザーはEr(Erbium)とYAG(Yttrium Aluminum Garnet)の組み合わせによる発信媒体から作り出されたレーザーで、発生するレーザーの波長は2.94μmとなります。水への吸収特性が高いので、Er: YAGレーザーの電磁波の光エネルギーが水に吸収されると瞬時に液体の水は気化します。膨張率が800~1000倍と言われ、その瞬発的な膨張時の物理的なエネルギーを利用します。このことを「蒸散」や「Water Micro Explosion法」と言います。他のレーザーを使用した際には熱が発生するので、熱的損傷の可能性があります。止血効果や切開効果は高くていいのですが、骨再生に応用する際は熱的損傷を加味すると限局的であると考えられます。(参照:監著 山本敦彦 インプラント周囲炎はEr: YAGレーザーでこう治す! クインテッセンス出版株式会社)

Er: YAGレーザーのメリットおよびデメリット

メリット

痛みが少ない:Er: YAGレーザーは水への高い吸収性がありますので、Water Micro Explosion法によって高い蒸散能力があり、水を含んだ生体組織の表層に作用し、また熱の発生が少ないために痛みがごくわずかです。感覚的な物で言うと「パチッパチッパチ」と弾かれているような感じです。しかし急性炎症時に使用する際はEr: YAGレーザーとはいえ痛みを伴いますので、局所麻酔下で使用することもあります。

組織に負担が少なく、体にやさしい:Er: YAGレーザーはCO2レーザーやNd:YAGレーザーなどに比べて照射部位が表層に限局しているので、組織の深部への影響が少ないです。よって周囲の組織を保護することができます。

デメリット

パワーが弱い:CO2レーザーやNd:YAGレーザーなどに比べてパワーが弱いので時間がかかるというのがあります。例えば大きな虫歯を除去しようとするのに歯科用タービン(歯を削る時のドリルのこと)で虫歯を除去するよりもだいぶ時間が掛かってしまいます。非侵襲的な方法でいいのですが、時間が掛かってしまうことがデメリットになります。

止血効果がやや弱い:Er: YAGレーザーにも止血効果はあるのですが、CO2レーザーやNd:YAGレーザーなどに比べてやや弱いです。このことからも止血目的で用いると時間が掛かることになります。

Er: YAGレーザーによってできる治療

虫歯治療

虫歯の部分をEr: YAGレーザーによって除去することができます。これは削ると言うよりもWater Micro Explosion法によって虫歯になった部位を吹き飛ばしているイメージです。痛みが非常に少ないので大抵は麻酔なしで行うことができ、小さなお子様にも受け入れてもらいやすいです。「このビームで虫バイ菌をやっつけるんだよ。かっこいいだろ!!(‘ω’)ノ」なんて言うと少しはお子様も虫歯治療を嫌がらずに興味をもってくれるかもしれません。しかし先ほどもデメリットのところで述べたように虫歯のところを除去するのに時間が掛かります。虫歯の中で初期虫歯が適用と言えます。深く進行してしまっている虫歯にはあまり現実的ではなくおすすめではないです。

知覚過敏

知覚過敏の原因として象牙質の露出があります。その象牙質の象牙細管を防ぐ目的でレーザーを照射します。知覚過敏剤と併用することもあります。しかししみる症状がきつい場合は効果が弱いです。この場合は歯の神経(歯髄)自体を取らないといけないです。

歯周病

歯と歯ぐきの間には歯肉溝という溝があります。通常は2~3mmなのですが、これが4mm以上になると病的な状態となり歯周ポケットと呼び方が変わります。深い歯周ポケット内には嫌気性菌が多く存在して組織の破壊が起こりやすい状態となっています。(参照:小野善弘 著 コンセプトをもった予知性の高い歯周外科処置)歯周病は細菌感染によって歯肉の炎症(歯肉炎)や歯周ポケットによって歯槽骨が溶かされ歯が動揺するなどの症状を有する骨の病気です。Er: YAGレーザーをこの歯周ポケット内へ照射することによって殺菌効果があります。これはWater Micro Explosion法によって歯周ポケット内のバイオフィルムや歯石を除去するからです。処置の際の出血や疼痛を少なくする効果もあります。また治療後の痛みや不快感が少ないというメリットもあります。しかし、深すぎる歯周ポケットの場合はレーザー単独では難しいため、エムドゲインやリグロス、骨補填材の併用などが必要になってきます。

小帯切除

小帯切除にも応用できます。例えば上唇小帯によって、正中の歯が歯間離開を起こしている場合は小帯を切除しなければなりません。その時にEr: YAGレーザーを用いると出血を軽減できます。

色素沈着除去

タバコの摂取によって、メラニン色素の沈着が歯ぐきに起こり、歯ぐきが黒ずんでいることがあります。CO2レーザーやNd:YAGレーザーでも除去できるのですが、レーザーが組織の深部まで届き炭化層ができ、術後の疼痛が大きいです。その点を比較するとEr: YAGレーザーは照射部が組織の表層に限局されているので、痛みが少なく歯ぐきや身体組織に負担の少ない体にやさしいと言えます。

口内炎

口内炎の部位にEr: YAGレーザーを照射することによって、口内炎の表層に一層の膜を形成するといった感じです。注意点としては通常はEr: YAGレーザーを1~3回程照射し、2週間後ぐらいまでには治癒してくるのですが、レーザーを当て続けてもいつまでも治癒しないなどがありましたら、違う疾患を疑いますので、大学病院等で検査していただくことが勧められます。(某タレント様で、口内炎だと思っていた物が実は癌であったとの事例もありニュースにもなりました。)

インプラント周囲炎

インプラント周囲炎とは、歯槽骨に埋め込んだインプラント本体の表面が歯石やプラークによる細菌感染により、インプラント周囲の歯槽骨が溶かされ、インプラント体が動揺したり、インプラント周囲から膿が排出される状態になります。例えで言うならば「インプラントは虫歯にはならないが、歯周病にはなりやすい」です。CO2レーザーでインプラント体表面のプラークや歯石を除去しようとしたら、インプラント体表面の温度が上昇してしまい、熱的損傷によって、インプラント表面への骨再生やオステオインテグレーションに影響がでることが考えられます。Er: YAGレーザーではWater Micro Explosion法によりインプラント体の温度上昇がごくわずかなので熱的損傷はありません。Er: YAGレーザーにおいてインプラント周囲炎の治療で一番効果を発揮すると言っても過言ではありません。現に2023年にインプラント体表面に沈着したプラークや歯石を除去する方法として厚生労働省からEr: YAGレーザーが正式に認可されました。

まとめ

以上に書いたことはほんの一例に過ぎませんので、Er: YAGレーザーはこれから活躍の場を広げていくと思います。レーザー治療によって皆様のお役に立てればと思います。

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