症例紹介
症例紹介:1歯だけのスマートデンチャー(ノンクラスプデンチャー、バネなしデンチャー)を入れた症例
こんにちは。三重県伊賀市にある歯医者「矢谷歯科医院」です。いつもご愛顧いただき誠にありがとうございます。
さて今回の症例コラムは、当院で行った、臼歯部への1歯だけのスマートデンチャーを入れた症例について背景や方法などを詳しくお伝えしよう思います。歯が無くなってしまったあとどのような治療をしようか迷われ、悩んでいらっしゃる患者様にとって判断材料になる一助になれば幸いです。
目次
症例紹介
患者様は67歳、女性の方になります。主訴としては「右下の歯が一本ないので歯を入れたい」とのことでした。もともとは違う部位での治療でご来院されまして、その部位の治療やクリーニングが終了したので、主治医である私が右下の歯が1本だけ無いのを見て、お尋ねしたところ、前から気にはなっていたけどついつい歯がないところを放置していしまっていたが、今回の来院をきっかけに歯を入れたいとのことでした。
歯を入れる治療法には何があるか?
歯がないところに歯を入れる方法として主に3つあります。それはインプラント治療、ブリッジ(Br)治療、入れ歯治療となります。現在の歯科医学では主にこの3つの方法しかありません。将来的には何百年後かに再生医療が進んで、歯自体が再び生えてくるような技術ができたらいいのですが、なかなかそうはいきません・・・。
インプラント治療とは?
インプラントは、抜歯によって歯が無くなったところに人工的な歯根(フィクスチャー)を埋め込み、アバットメント、上部構造と言われる人工の歯を入れる治療のことです。
【メリット】
- 天然歯のように違和感なく噛むことができる。
- 噛む力は、天然歯の約80%回復することができるので、硬いものを噛むことができるようになる。
- 隣の端を削る必要がない。
- よく噛めることにより、全身的な健康にも良い影響与える。
【デメリット】
- インプラントを顎の骨に埋め込むための手術が必要になる。
- 全身の疾患等により治療ができない場合がある。
- 定期的なプロフェッショナルケアを受け、指導のもとにへセルフケアを実地する必要がある。
- 保険適用外治療である。
ブリッジ治療とは?
ブリッジ治療とは、抜歯などによって無くなった歯を補うために隣在歯を削合し使用される補綴治療法であり、周囲の歯を支えにして人工歯を取り付ける方法です。
【メリット】
- 固定色であるため、装着しても違和感があまりない。
- 材料選択により、天然歯と遜色ない審美的な修復が可能。
- 保険適用も可能。(使用する材料に制限あり)
【デメリット】
- 修復物の固定のため、両輪の端を削る必要がある。
- 支える歯の負担が大きくなり、将来的にその端を失う原因となる可能性がある。
- 連結部の隙間が清掃不良により不衛生になりやすい。
- 治療部位により、空気が漏れて発音に支障が出ることがある。
入れ歯治療とは?
入れ歯治療の種類には全部床義歯(以下フルデンチャー)と部分床義歯(以下パーシャルデンチャー)の2種類があります。フルデンチャーは全ての歯が無い場合に使用します。パーシャルデンチャーは残存歯にバネ(クラスプ)を引っ掛けて部分的に歯が無いところを補います。
【メリット】
- ブリッジでは対応できないような大きな欠損に有効な治療法である。
- ブリッジのように、両隣の歯を削る必要がない。(代わりに、バネで固定する必要がある。)
- 保険適用も可能。(使用する材料に制限があり)
【デメリット】
- 固定のためのバネにより、隣の歯への負担が大きい。
- 噛む力が健康な状態に比べて、30から40%位になる。
- 頻繁に手入れする必要がある。
- 口の中に違和感を感じやすく、がたつきやすい。
- 食べかすにより不衛生になりやすい。
以上のようなことになります。詳しく知りたい方は過去にコラムで書かせて頂いておりますので、そちらの方もご覧になっていただければと思います。
上記に挙げていることを患者様に説明させていただきました。できればインプラント治療をしたいとのことでした。レントゲンおよびCT画像を見てみると、骨の幅が少し細いので骨を増やすことによってインプラントを埋入することは可能だと考えたのですが、患者様の既往に骨粗鬆症がありビスフォスフォネート製剤(BP製剤)を服薬されておりましたので、外科処置を行った際に顎骨壊死のリスクがありました。そのことをお伝えさせて頂くとさすがに顎骨壊死になるのは避けたいとのことでした。また歯が欠損している両隣の歯はなるべく削りたくないとのことであったので、最終的には入れ歯で治療することとなりました。
バネなしの入れ歯:スマートデンチャー(ノンクラスプデンチャー、バネなしデンチャー)
皆さん入れ歯のイメージってどんなことがありますか?私が今まで臨床を通して一番多かった意見が「入れ歯のバネが見えるのが嫌だ」ということだと思います。この患者様もまさしくそこがネックでした。しかしバネなしの入れ歯(以下、スマートデンチャー)にすることによってそこはカバーすることができます。
スマートデンチャーの特徴
【メリット】
- 金属のバネが無いので審美的に見た目がよい。
- 薬事承認を受けている。
- 水分への吸収性が低い。
- 生体への為害性が少ない。
【デメリット】
- 金属床なしの樹脂のみで作製した場合は金属床ありのものと比べて耐久性・機能性が劣る。
- 即日に修理することが難しい場合が多い。
スマートデンチャーなどについて詳しく知りたい方は、当院ホームページの「診療メニュー:入れ歯治療」もご覧になってくださいね。
スマートデンチャーの作製
実際はスマートデンチャーのレストという維持装置のために、少しだけ歯を削合します。しかしブリッジ治療に比べると、ほんのわずかな削除量で済みます。その後口腔内の型取りを行い、試適をし、口腔内にフィットしているようなら完成になります。
スマートデンチャー装着
欠損部の手前2本と後ろ1本の歯を支えにして、スマートデンチャーを作製しました。最初後ろの歯が内側へ向いており、入れ歯を支える歯としては使用できないと思ったのですが、歯自体はしっかりしており、支えとして使うことができたらさらに入れ歯が安定すると思ったので、技工所と相談した結果、うまいことバネを作製してくれました。技工士さんありがとうございます!さすがに後ろの歯はバネなしにすることはできなかったのですが、一番奥の歯なのでヒトからは見えないです。(実際には試適の際は良かったのですが、完成時に何らかのエラーがあり入れ歯が浮いた感じになり後ろのバネを一回やり直しました。それほど内側に向いている歯にバネを掛けるのは難易度が高くなります。)
内側は金属にて覆っております。これは入れ歯自体の強度を増すことと金属なので、薄くても割れることがないので、薄くすることによって装着時の異物感をなるべく少なくすることを目的に行っております。
前方部の方は歯を2本使ってバネなしで支えにしています。バネありの入れ歯と比較したら非常に審美的で、ヒトと会話するぐらいの距離であれば全く入れ歯が目立ちません。患者様には入れ歯を入れていることが目立たないと非常に喜んでいただけました。私もうれしかったです。
お値段(治療費)
スマートデンチャーの作製費としては今回、¥242,000-(税込み)になります。入れ歯の費用は残存歯数や入れ歯の設計、金属の使用量によってお値段が大きく変わってきます。(最近ではニュースでも言われているように、金属の値段が高騰してきています。)上記の症例のように入れ歯は1歯だけでも作製できます。当院では必ず作製前にお見積りを出させていただき、患者様が納得し安心して治療に臨んでいただけるようにしております。
まとめ
今回はスマートデンチャーの症例について書かせて頂きました。歯がないところに歯を入れたいけど、インプラントは値段が高いし、ブリッジにすると両隣の歯を削らないといけないし、入れ歯にすると金属のバネが目立って嫌だと思われている方いらっしゃるのではないでしょうか?当院に御相談していただけましたら、丁寧にそれぞれの治療のメリットおよびデメリットをご説明させていただきますので、何か歯やお口のことで悩んでいらっしゃる方は三重県伊賀市にある歯医者「矢谷歯科医院」に是非、御相談くださいね。