症例紹介
症例紹介:高齢患者様に対して抜歯および矯正治療を行った症例
こんにちは。三重県伊賀市にある歯医者「矢谷歯科医院」です。
やっと春らしい天気や温かい気温になってきましたね。桜の開花宣言もされ春の季節が到来した感じがします。春と言えば日本では始まりの季節になりますので、当院で何か新しい取り組みやチャレンジをしていきたいと思っております。このコラムを見てくださっている皆様も何か新しいことを始めてみてはいかがでしょうか?
さて今回は高齢患者様に対して、抜歯および矯正治療を行った症例ついて御紹介したいと思います。ご高齢になってくると身体的に様々な問題が生じてきます。例えば血管が硬化し、血液の流れが悪くなったりして心筋梗塞などの心疾患や血流が滞ることによって血栓ができ、それが脳などの細い血管などに詰まると脳血管障害が生じたり、糖尿病の患者様であれば全身的なコントロールが必要であったりなど様々なリスクが増えます。またこれらの疾患を予防するためにバイアスピリンやワルファリンなどの抗凝固剤やインシュリン投与などのお薬を服薬されている患者様も少なくはないのではないでしょうか?ちなみに私は食べ過ぎないこと、適度な運動をすることを心掛けています。
目次
症例紹介
今回の患者様は85歳男性の方で、主訴としては下の前歯が折れたので治療してほしいとの主訴でご来院されました。口腔内を診察させていただきますと右下1の歯が虫歯によって折れていて根っこだけの状態になっていました。右下1など下顎の前歯部の場合は歯の形態的に細い場合が多く、根本から折れていると土台を作製し、被せ物をすることができないことが多いです。上記の患者様の場合も保存が不可の状態でしたので、抜歯することとなりました。抜歯を行う際に問題となってくるのが、出血に関してです。通常、歯を抜歯すると出血し抜歯窩に血が溜まり、やがて血が固まり血餅となり骨や軟組織となって治癒していくのですが、上記の患者様は心疾患をわずらっておられ、抗凝固剤を服薬されてました。一昔前ですと抗凝固薬を服薬されていると、抜歯時に止血しにくくなることから、抜歯の前日ぐらいから抗凝固薬の服薬を中止して抜歯をさせていただくことが多かったのですが、最近の考え方では抗凝固薬などの服薬を中止してしまうことによって、他の重篤な疾患も併発してしまう可能性があることが危惧され、それらを予防するために抗凝固薬の服薬を中止せずに抜歯を行うことが一般的となってきています。しかし抗凝固薬の服用量が多いと抜歯時に止血しにくくなるリスクもございますので、そこは医科の主治医に対診をとって相談させていただいております。
当院では上記のように、外科処置時にリスクが高い患者様に対しては生体モニターを装着させていただき処置中の血圧の変化や脈拍数、酸素飽和度を測定しながら行っております。このことによって患者様の微妙な変化を察知して迅速な対応が可能です。また患者様には安心・安全に処置を受けていただきたいです。我々医療従事者にとっても患者様の状態を常に把握できることは安心です。
上記の患者様の場合、抜歯中は特に何の問題もなく、抜歯後の止血も普通に確認できたのでよかったです。
抜歯後の治療について
抜歯後は前歯部ということもあり、抜けたところの隙間が目立ち、言葉が悪いかもしれないのですがいわゆる「歯抜け」の状態となり、患者様からしたらこの状態を何とかしたいとのことでした。最初、患者様は85歳とご高齢でしたので、早く簡単に歯を入れてあげようと思い、入れ歯治療をご提案させていただいたのですが患者様は入れ歯はバネが目立つのと異物感が強いのが嫌だとのことで拒否されました。歯のスペース的にインプラントはできないので、残る方法としては矯正治療で歯をきれいに並べるしかないと思いご提案させていただいたところ、快く受け入れてくれました。
矯正治療の解説
今回の患者様のケースですと、左下1が歯列に対して内側に転位している状態でしたので、前にもってくるように動かす必要がありました。また他の歯に関しても右下2と左下2が捻転といってわずかに捻じれている状態ですのでそれも解消する必要があります。今回も前歯部のみの矯正(プチ矯正)で対応できると考え、前歯部のみのワイヤー矯正を行いました。
矯正治療の経過
矯正治療開始
まずはブラケットと言ってワイヤーを固定するための装置を歯に装着していきます。ブラケット装着後はワイヤーを張り、エラスティックゴムにてワイヤーをブラケットに固定します。
矯正治療開始1ヶ月後
左下1は全く動いていません。右下2と左下2は少し動いている感じです。
矯正治療開始2ヶ月後
わずかな動きを認めます。特に右下2と左下2の捻転がとれてきている雰囲気です。
矯正治療開始3ヶ月後
少し歯が動いてきました。このままワイヤーなどを交換して更に待ちます。
矯正治療開始4ヶ月後
歯が並びました。患者様に確認するときれいに歯が並んだと納得していただいたので、ワイヤーやブラケットなどの矯正器具を外しました。
歯と歯のコンタクトの回復
矯正治療後の歯の後戻りを防止する目的と歯と歯のコンタクトをつくるためにコンポジットレジン(CR、虫歯治療の際に使用される歯の白い詰め物のこと)によるダイレクトボンディング法によって行いました。患者様の歯の模型上であらかじめどのように回復させるかをシュミレーションし、それに沿って歯の詰め物を行いコンタクトを回復していきました。また歯の裏側には保定用のワイヤーを張って歯が後戻りしないように固定しました。
総評
今回はご高齢の患者様であったとしてもいつまでもきれいにかっこよくおられたいというお気持ちが強く伝わってきました。歯をきれいに健康的に維持したいという思いはお歳など関係なくその方の思い一つであることをこちらも学ばせていただきました。矯正治療のメリットとしては見た目がきれいになるというのはあるのですが、歯がきれいに並ぶことによって歯磨きがしやすくなり虫歯や歯周病になりにくくなるというのが大きいと思います。歯を失った際にはインプラント治療、ブリッジ治療、入れ歯治療があるのですが、今回の症例のように矯正治療によって失ったところの部分を補うことも大切だと思います。
今回の治療費としては抜歯代金は別として、部分矯正(プチ矯正):¥165,000-、調整料(1回につき):¥2,750-、それに毎回のクリーニング代などが掛かってきます。当院の治療費に関することや自由診療に対する考え方は当院ホームページを参考にしていただければと思います。
まとめ
今回は高齢者患者様に対して抜歯および矯正治療を行った症例を御紹介させていただきました。私の治療に対する思いとしてはなるべくその患者様の思いやご希望されることをお聞きし、患者様がなりたい自分になれるように歯科治療を通してお手伝いをすることではないかと思っております。またこちらからもご提案し患者様にずっと長く健康に過ごしいただけたらと考えています。もし何か悩み事がございましたら、お気軽に三重県伊賀市にある歯医者「矢谷歯科医院」に御相談ください。